台風クラブの『火の玉ロック』を聴いた話

 ひとつの恐怖の時代を生きたフランスの哲学者の回想によれば、人間みなが遅すぎる救助をまちこがれている恐怖の時代には、誰かひとり遥かな救いをもとめて叫び声をあげる時、それを聞く者はみな、その叫びが自分自身の声でなかったかと、わが耳を疑うということだ。――大江健三郎『叫び声』

今日、台風クラブの7インチシングル『火の玉ロック』を聴いた。広島のSTEREO RECORDSという店の通販サイトで注文していたやつが、受け取り場所に指定していたセブンイレブンに届いたというメールを、仕事の昼休憩時間に受信・確認し、それから午後の業務を終えて定時過ぎに職場を出て受け取りに行った。セブンイレブンファミリーマートクロネコヤマトの荷物を受け取ることができるサービスの存在を知ったのはごく最近だから利用するのは今回が初めてで、これも昼休憩中に荷物の受け取り方法を調べてみると、ローソンにおけるLoppiファミリーマートにおけるFamiポート的な端末がセブンイレブンにはなく、店員が初心者の場合は受け取り手続きに難渋するおそれありといった類の情報が複数見つかったので不安になった。案の定、若い男の店員は最初おれが提示した12桁の送り状番号をレジの機械に入力したあとで「あっ、13桁なんで、もう1桁足りないですね」などと言っていたが、問答を繰り返すうちにどうにか受け取ることができた。もう二度とセブンイレブンクロネコヤマトの荷物は受け取らない。

表題曲の「火の玉ロック」は既にロスレス音源を買ってあったしYouTubeでPVも公開されているしSpotifyでも聴けるからもう何度も聴いていたが、本物のレコードに針を落として聴くのは格別だ。といっても音源そのものはレコードだろうがサブスクリプションだろうが同じなのだから、音質云々を除いたそういう感慨はおれの思い込みにすぎないのかもしれない。B面(文字通り!)に収録されている「遠足」という曲はGreen Dayの「Basket Case」のカバーで、しかも歌詞はボーカルの石塚淳が書いたオリジナルの日本語詞だ。

分かりかけた気分が/白みかけた場面で /またひとつ星が消えてった/頬なでる大袈裟な感傷 ――台風クラブ「遠足」

この7インチシングルに入っている二曲は、ともに消えていった星たちのことを歌った歌だ。台風クラブはライブで「解散してしまった大好きなバンドたちと、いつか解散してしまうおれらに贈る歌です」という石塚淳のMCのあとで「火の玉ロック」を演奏する、とTwitterで見て知った。台風クラブのライブをおれはまだ見たことがない。

ロックバンドのことを歌うロックバンドがおれは大好きだ。小説とはなにか、と考えつづけている小説家のことが好きなように。

STEREO RECORDSでは台風クラブの他にザ・ハイロウズの『バームクーヘン』のアナログ盤も購入していたのだったがもう書く気力がない。とても眠い。セブンイレブンのことを書きすぎたのがよくなかったか、もしくはこの文章を書く前、河合あすなのAVを物色している最中に期せずサンプル動画で射精してしまったのがよくなかったのか。巻頭に置いた大江健三郎にもついに触れられなかった。明日つづきを書こうと思う。